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口琴
第13章 お義父様との縄遊び
後を追う梨絵を知ってか知らずか、黒い車は、雨粒を蹴散らしながら、逃げるように走り去って行った。

数十メートル走った先の交叉点。赤信号に足を止められた梨絵は膝から崩れ落ちたが、どこかホッとしている自分に困惑していた。

何故、すぐに追いかけなかったの?…

何故、追いかけたの?…

矛盾する二つの思いが、梨絵の心で縺れ合っていた。

本当は分かっていた。どちらが本当の自分なのかを。

心を騙し騙し生きてきたから…。

中條の言葉が、梨絵の中に深く刺さっている。図星だ。

養子縁組の同意書もサインを拒んで抵抗し、敬介に殴られ、無理矢理サインさせられたように装ったが、"無理矢理"なんかじゃなかった…。
本当の愛があれば例え殺されたとしても、抵抗し続けられた筈。
梨絵はうわべの抵抗をすることで、蕾を守るふりをした。

守ったのは蕾ではなく、自分自身…。

偽善だ…。母親の皮を被った偽者だ…。

だから…涙が出ない…。泣けない…。雨が頬を濡らしてくれるのは、梨絵にとって好都合だった。

敬介や、中條を愚かな人間だと思ったが、本当に愚かなのは自分だと梨絵は思った。

激しく車が往来する交叉点。あの中に飛び込んでしまえば…。梨絵の脳に"死"が過る。


「ママァ!」

パシャパシャと、わざわざ水溜まりを選びながら、赤い長靴の梓が駆け寄ってきた。可愛いキャラクターの絵が散りばめられた傘を梨絵の頭上に翳す。

「ママ、あずの傘に入って。…お姉ちゃん、お泊まりするの?ママ、大丈夫だよ?明日帰って来るよ?あず、お姉ちゃんとかくれんぼの続きするんだもん」

「…あずちゃん…」

梨絵は堰を切ったように泣き、梓を抱き締めた。

「ママ…おうち帰ろ?」

「…ん…。ごめんね…あずちゃん…」

よろめきながら立ち上がると、梓の手を繋ぎ、重い心を引き摺るように来た道を戻る。

すると、家を囲うイヌマキの生け垣の下と、中條の車が停まっていた路肩辺りに、靴が片方ずつ転がっていた。見慣れないスニーカー。男の子の靴…。

倒れた時と、中條の車に乗せられる時に蕾の足から脱げ落ちたのだ。

梨絵は靴を拾い上げ、いぶかしげに眺めた。

「…!?…これは…」

『4ー3 大崎 聖』

靴に書かれた名前に、梨絵の血の気が引く。

「…『大崎』って…『聖』…って…まさか…」
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