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口琴
第13章 お義父様との縄遊び
その道の愛好家達が好む麻縄は、愛らしい蕾にはあまりにもグロテスク。細くて色鮮やかな可愛らしい縄跳びが幼い蕾の躰には相応しいと中條は考えた。

数本の縄跳びを買って部屋に入って来たのは彩乃だった。そこに中條の姿はなく、ベッドの上で眠る蕾だけ。

指示通りに蕾に下着をはかせ、寝巻きを着せ終えた。

美しい蕾の寝顔をじっと見ていると、先程の中條の言葉が彩乃の中に甦り、奇妙な感情が燻りはじめる。

…劣等感…嫉妬…憎悪…憤り…。彩乃にとって初めての感情。それは、小さな火種のように燻っていて、いくら揉み消そうとしても、また別の場所で燻り出すのだ。

怒りの火種は火尖槍となり、その矛先は中條へではなく、なんの罪もない蕾へと向いていた。

いつの間にそんな事をしてしまったのか、彩乃自身にも自覚がない。脛動脈が脈打つ蕾の細い首に、ピンクの縄跳びがぐるりと一周し、白い喉元で交わる。その両端を力いっぱい左右に引いていた。

「…っ…うっ…」

蕾の唇が微かに開き、呻き声が洩れる。

人形の様に無表情の彩乃は、瞬き一つせず、交差する縄の一点を見つめながら絞り上げた。

すると、ドア越しに会話が聞こえた。彩乃はハッと我にかえると、自分の衝動に狼狽し、手の力が一気に抜けた。

程なくしてドアが開き、北川が入ってくると、彩乃は俯いたまま一礼し、よろめきながら逃げるように出ていった。

北川は彩乃の挙動を訝しげに思いながらも、中條を部屋へエスコートすると、部屋の照明を薄暗く落とす。

「お坊っちゃま、私はこれで失礼致します…」

「うむ…」

二人きりになるや否や、蕾の美しい寝顔に鼻息を洩らしながら自分の顔を近づける中條。

「さあ、やっと親子水入らずだ…。おとうさまと親子の愛を確かめあおう。まずは挨拶からだ。親しき仲にも礼儀ありだぞ?ヒッヒッ…」

色褪せていた蕾の小さな唇には赤みが戻り、微かに開いて静かな寝息をたてている。その唇に中條はナメクジのような舌をヌメヌメと這わせた。

舌先を割り込ませ歯列をなぞる。それから手で顎を下げて更に奥へと忍ばせ、柔らかく小さな舌を捕らえた。

眠っている蕾の大人しい舌を、男の舌は思うがままに弄ぶ。

「…可愛い私の蕾…。さあ、私の為に着飾っておくれ…」

中條は、カラフルな縄跳びを手に取った。
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