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口琴
第15章 守るべきもの
「あ、昨日の火事…ニュースでやってる…」
女性キャスターが、神妙な表情でニュースを読み上げていた。
『……昨夜の火災で、焼け跡から、折り重なった状態で男女の遺体が見つかり、この家の主人で、中條グループ代表取締役社長の中條一巳さん(五十二歳)と、従業員の森本彩乃さん(十九歳)と連絡がつかず、遺体がこの二人と見て調べを進めています。
また、中條一巳さんの秘書兼執事である北川寛吉さん(六十一歳)が喉などに重傷を負い、近くの病院に搬送されましたが、他の住人や従業員に怪我はありませんでした。
この火災は、何者かが家の一階にあるアトリエに侵入し、ガソリンを撒いて火をつけ、逃走したと言う従業員達の証言と、アトリエからガソリン携行缶が見つかった事から、警視庁は放火及び殺人事件として調べを進める方針です。
中條氏との間に怨恨を抱く者がなかったのか人間関係を調査し、自宅周辺の防犯カメラの映像を分析して、犯人の行方を探すと共に、現在入院中の北川さんが、何等かの事情を知っているとみて、北川さんの回復を待って事情を聞くと言うことです。
では、次のニュースです。…』
「…あの人…死んじゃったの?…」
「あぁ、…みたいだな…。でも、良かったじゃん。これでもう、あいつの所に連れ戻される心配はない。ニュース、お前の事、言ってなかったな…」
「…うん…。私の事は、誰にも秘密なの。だから…。でも、これから私…どこへ行けばいいの?…。おうちにも帰れない…」
複雑な表情で視線を落とす蕾に、聖の胸は堪らなく震えた。
それは、単なる哀れみとは違う。
もう、離したくない。
蕾と別れたあの日から、ずっと後悔していた。
兄妹だと分かった後もずっと…
本当の自分を殺していた。
もう、二度と後悔したくない…。
「…蕾…ずっとここに…」
プルルル…プルルル…
聖の言葉を遮るように、電話が鳴る。
「はい。大崎ですが…」
『もしもし。大崎か?俺だ。桜木だ』
「先生?どうしたの?」
『…これから緊急職員会議なんだが…それでちょっとお前に訊きたい事が…』
「俺…何かした?」
『お前…昨夜七時頃どこにいた?あの火事の現場になんか行ってねぇよな?』
「…どうして?…」
『警察から連絡があってな。防犯カメラに中高生らしい少年が映ってたらしくて…』
「え?…」
女性キャスターが、神妙な表情でニュースを読み上げていた。
『……昨夜の火災で、焼け跡から、折り重なった状態で男女の遺体が見つかり、この家の主人で、中條グループ代表取締役社長の中條一巳さん(五十二歳)と、従業員の森本彩乃さん(十九歳)と連絡がつかず、遺体がこの二人と見て調べを進めています。
また、中條一巳さんの秘書兼執事である北川寛吉さん(六十一歳)が喉などに重傷を負い、近くの病院に搬送されましたが、他の住人や従業員に怪我はありませんでした。
この火災は、何者かが家の一階にあるアトリエに侵入し、ガソリンを撒いて火をつけ、逃走したと言う従業員達の証言と、アトリエからガソリン携行缶が見つかった事から、警視庁は放火及び殺人事件として調べを進める方針です。
中條氏との間に怨恨を抱く者がなかったのか人間関係を調査し、自宅周辺の防犯カメラの映像を分析して、犯人の行方を探すと共に、現在入院中の北川さんが、何等かの事情を知っているとみて、北川さんの回復を待って事情を聞くと言うことです。
では、次のニュースです。…』
「…あの人…死んじゃったの?…」
「あぁ、…みたいだな…。でも、良かったじゃん。これでもう、あいつの所に連れ戻される心配はない。ニュース、お前の事、言ってなかったな…」
「…うん…。私の事は、誰にも秘密なの。だから…。でも、これから私…どこへ行けばいいの?…。おうちにも帰れない…」
複雑な表情で視線を落とす蕾に、聖の胸は堪らなく震えた。
それは、単なる哀れみとは違う。
もう、離したくない。
蕾と別れたあの日から、ずっと後悔していた。
兄妹だと分かった後もずっと…
本当の自分を殺していた。
もう、二度と後悔したくない…。
「…蕾…ずっとここに…」
プルルル…プルルル…
聖の言葉を遮るように、電話が鳴る。
「はい。大崎ですが…」
『もしもし。大崎か?俺だ。桜木だ』
「先生?どうしたの?」
『…これから緊急職員会議なんだが…それでちょっとお前に訊きたい事が…』
「俺…何かした?」
『お前…昨夜七時頃どこにいた?あの火事の現場になんか行ってねぇよな?』
「…どうして?…」
『警察から連絡があってな。防犯カメラに中高生らしい少年が映ってたらしくて…』
「え?…」