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口琴
第15章 守るべきもの
蕾の固い表情に不安を感じた聖は、話題を逸らした。

「ほら、まだメシも途中だし、食ったらゲームでもやろうぜ?楽しいことして、やなことは忘れる。な?」

「…私…ゲームなんてしたことない…」

「じゃぁ、教えてやるよ。すんげぇ楽しいから。な?」

「…ん…」

「…よし、決まり!」

聖は、ホッと胸を撫で下ろす。

少しでも蕾に笑顔が戻るように。少しでも普通の少女に戻れるように。
ほんの一時でもいい、忌まわしい過去を忘れさせてあげたかった。


それから二人は、失っていた子どもらしい時間を取り戻すかのように遊んだ。

テレビゲームやトランプなど、室内でしか遊ばなかったが、それでも十分だった。

聖と一緒に、大声で笑っている自分が、とても愛しく思える。

こんな当たり前の、ごく普通のことが、蕾には幸せだった。

こんな風に、最後に笑ったのはいつだったんだろう…覚えていない…。笑い方を忘れてしまうところだった…。

「聖君…ありがとう。楽しかったよ?」

「だろ?もっといっぱい遊ぼうぜ?えっと、次は…」

「…聖君…。お願いがあるの」

「…ん?」

聖は、まさか、また警察へ行くと言い出すのでは…と、身構えてしまった。

「ハーモニカ聴きたい」

「…え?…」

「ダメ?」

「…それは…」

躊躇したのは、蕾に、あの悪夢が蘇るのを危惧したから。

「お願い。ね?聖君…」

「…あ、あぁ…分かった…」

この翡翠色には敵わない…。

リビングのソファに並んで座る。

聖は静かに目を閉じ、深く深呼吸すると、ハーモニカに唇を充てた。



聖の唇に紡がれる、愛の言葉にも似た音色…。

蕾の心に優しく共鳴する…。

自然に零れる美しい涙は、辛うじて築いていた聖の心の砦を、少しずつ崩していった。

妹だ…

妹だ…

妹なんだ…

でも…

好きだ…

曲も終盤に差し掛かった時、聖の唇がピタリと止まった。

カタンッ!

ハーモニカが、床に転がり落ちるタイミングとほぼ同時に、聖の唇が蕾の唇に重なる。


蕾は一瞬驚いたが、そのままそっと目を閉じた…。
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