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口琴
第15章 守るべきもの
キスをしたのは、聖の中の幾つかの思いが、そう突き動かした。

ハーモニカに涙する蕾の、計り知れない苦しみを思い…

男と女として決して交わることのない、兄妹と言う関係を呪い…

この僅かな幸せでさえ、またすぐに壊されてしまいそうで…。

こんなに好きなのに…
こんなに愛しいのに…

聖の心の中は、掻き乱されていた。

唇は少しずつ這いながら、蕾の耳朶を啄み、白い首筋へと…。

それはまるで、ハーモニカを奏でているようだった。

「あっ…」

蕾の唇から思わず声が洩れたのは、聖がこれからしようとしていることが分かったから。

蕾にとって、セックスは"怖い"と言う感覚しかなく、不安だった。

しかしその一方で、中條によって"躾"られた躰は、敏感に反応してしまう。

…どうしよう…

蕾が戸惑っていると

「蕾…好きだ…」

聖が潤んだ瞳で見つめ、熱く掠れた声でつぶやく。
そしてまた唇が落とされた。

中條や義父や松岡のような、淫欲に満ちた身勝手な愛撫とは違う。
優しく語りかけられているような、包み込まれていくような…。

聖の唇から伝わる、熱い思いを受け止めようと、小さな手を聖の背中にそっと回した。

二人の躰は、熱を帯びていく…。

頬を紅潮させ、呼吸が乱れていく…。

セックスの仕方など知らないが、もっと蕾を感じたい…聖はそう思った。

「蕾…したい…」

蕾は瞳を潤ませて、コクリと頷いた。

服の上から、胸を触った。

僅かな膨らみを感じる。

ジーパンの中が、痛い。

聖の指が、蕾のカーディガンのボタンにかかったその時…


ピンポーン…ピンポーン…


突然の玄関のチャイムに、二人はハッとして離れた。

「…聖君…」

蕾の不安そうな顔を見て、聖は苦笑いを浮かべた。

「誰だろ…?…親父達はまだ帰らない筈だけど…」
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