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口琴
第15章 守るべきもの
薄暗い部屋に事務机が二つ向い合わせでくっついて置かれ、それぞれの机にはパイプ椅子。部屋の隅に供述調書を取るための机と、ノートパソコン。壁には、はめ込みの鏡。恐らく、あれがマジックミラーってやつだろう。
…ほんとに刑事ドラマみたいなんだ…。
あまりにもベタ過ぎて、聖は思わず顔が笑ってしまった。
「ん?なんか余裕だね?怖くないの?」
森下に指摘され、案外冷静な自分に少し呆れた。
「…すみません…。あの、セブ…桜木先生は?…」
「先生は、君のご両親に連絡取るために一旦学校へ戻られた。すぐにここへ来てくれるから、心配要らないよ?」
「…そう…ですか…」
「いい先生だな?職員会議で、防犯カメラの画像を見た時、他の先生方は君に似ていると言う方が多い中、桜木先生だけは断固として、君じゃないって言い続けた」
「………」
「じぁ、そこに座って。あ、そうだ。腹減ってない?」
「まさかカツ丼とか、ベタなやつ?」
「君ねえ、ふざけるのもいい加減にしなさい」
森下は、聖の態度に少し苛立ち始めていた。
「…すみません…」
潮らしくなった聖に、少し言い過ぎたと思い、静かなトーンで森下は話し始めた。
「ま、いい…。では、さっそく聞きたいんだが、昨日の夜、あの火災があった七時前後、希望ヶ丘の公園でハーモニカ吹いてたって言ったよね?」
「はい」
「何時から何時まで?…」
「時間まで正確には分からないけど、テストが終わってすぐに、あの公園に行きました。でもハーモニカを取りに自転車で家に戻って、それからまた自転車であの公園に着いたのが、五時頃だったかも…。銀杏の木の上から見た空は夕焼けだったから…」
「…銀杏の?…ふむ…。それで?」
「ずっと吹き続けてたから、二時間近くは吹いてたと思う。何時までか分からないけど…。そしたら、突然煙があの家の方から上がって…」
「先ずは、学校から直接あそこへ行ったの?ハーモニカを吹きに?それでハーモニカを忘れたから、取りに戻った…ってこと?」
「…はい…」
「何故?もう遅いし、別の日にしようって思わなかったの?わざわざハーモニカを取りに帰ってまで…あの日に拘った理由は?」
「…別に…あの日だからって訳じゃ…」
自分が蕾にしてあげられることは、ハーモニカを吹くことだけだと、やっと気づいたから…
そこまでは言えなかった。
…ほんとに刑事ドラマみたいなんだ…。
あまりにもベタ過ぎて、聖は思わず顔が笑ってしまった。
「ん?なんか余裕だね?怖くないの?」
森下に指摘され、案外冷静な自分に少し呆れた。
「…すみません…。あの、セブ…桜木先生は?…」
「先生は、君のご両親に連絡取るために一旦学校へ戻られた。すぐにここへ来てくれるから、心配要らないよ?」
「…そう…ですか…」
「いい先生だな?職員会議で、防犯カメラの画像を見た時、他の先生方は君に似ていると言う方が多い中、桜木先生だけは断固として、君じゃないって言い続けた」
「………」
「じぁ、そこに座って。あ、そうだ。腹減ってない?」
「まさかカツ丼とか、ベタなやつ?」
「君ねえ、ふざけるのもいい加減にしなさい」
森下は、聖の態度に少し苛立ち始めていた。
「…すみません…」
潮らしくなった聖に、少し言い過ぎたと思い、静かなトーンで森下は話し始めた。
「ま、いい…。では、さっそく聞きたいんだが、昨日の夜、あの火災があった七時前後、希望ヶ丘の公園でハーモニカ吹いてたって言ったよね?」
「はい」
「何時から何時まで?…」
「時間まで正確には分からないけど、テストが終わってすぐに、あの公園に行きました。でもハーモニカを取りに自転車で家に戻って、それからまた自転車であの公園に着いたのが、五時頃だったかも…。銀杏の木の上から見た空は夕焼けだったから…」
「…銀杏の?…ふむ…。それで?」
「ずっと吹き続けてたから、二時間近くは吹いてたと思う。何時までか分からないけど…。そしたら、突然煙があの家の方から上がって…」
「先ずは、学校から直接あそこへ行ったの?ハーモニカを吹きに?それでハーモニカを忘れたから、取りに戻った…ってこと?」
「…はい…」
「何故?もう遅いし、別の日にしようって思わなかったの?わざわざハーモニカを取りに帰ってまで…あの日に拘った理由は?」
「…別に…あの日だからって訳じゃ…」
自分が蕾にしてあげられることは、ハーモニカを吹くことだけだと、やっと気づいたから…
そこまでは言えなかった。