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口琴
第15章 守るべきもの
「君、一人?それとも他に誰か…?」
「俺一人です」
「そもそも何のために?音楽会か何かの練習かな?」
「いえ」
「じゃあ、何のために?」
「…………」
核心には触れられたくない。
黙り込む聖を見て、森下は質問を変えた。
「いつも、そこで吹いてるの?」
「ハーモニカを吹いたのは、昨日が初めてです」
「それ以前にもあの場所へ行ったことは?」
「…はい。あります。一週間くらい前から…」
「目的は?」
「………」
またか…。森下は、時折黙り込む少年に疑念を持ちながらも質問を変えた。
「どうしてあの公園なの?公園なら、君んちの近くにもあるぞ?」
「それは…」
「…正直に言って?…」
「…聴かせてあげたくて…」
「誰に?」
「…ある人に…」
「ある人…。誰?好きな子かな?あの近所の子?」
「…まあ、そんなとこかな…」
「そうか。どうして、その子に直接会って聴かせてあげなかったの?あんな所で吹いてても聴こえないんじゃないかな?直接会えない理由でも?もしかして、片思いとか…」
「…………」
また黙秘か…。
「あ、余計な詮索は野暮だね。ごめんごめん。じゃあ…誰か他に、君がハーモニカ吹いているところを見てた人は?」
「分かりません…。夢中で吹いてたから…」
「うーん…」
もしかして、"白"か?…。
森下は、この少年の話が作り話のようには思えなかったが、何か隠していることは確かで、釈然としない。少し苛ついたように、オールバックの髪をクシャクシャッと掻いた。
家を出る間際に見せた、この少年の不自然な様子も引っかかる。
トントン…
ガチャッ!
ノックの返事を待たずして、ドアが開く。
入ってきたのは、部下の刑事だった。
森下の耳元に近づき、小声で耳打ちを始めたが、聖には漏れ聞こえていた。
「聞き込みしたところ、昨夜ハーモニカを聴いたと言う人が…。今、隣の部屋に来てもらってます」
「すぐ行く。ここを頼む」
森下が隣の部屋に入ると、白髪の上品な老婦人が生意気そうな白いプードルを抱いて座っていた。
「わざわざ、ご足労頂きましてありがとうございます。私は昨夜の中條邸の放火事件を担当しております森下と申します」
「ご苦労様です。私は、山下 豊子と申します」
老婦人は、おっとりとした物言いで、丁寧にお辞儀をした。
「俺一人です」
「そもそも何のために?音楽会か何かの練習かな?」
「いえ」
「じゃあ、何のために?」
「…………」
核心には触れられたくない。
黙り込む聖を見て、森下は質問を変えた。
「いつも、そこで吹いてるの?」
「ハーモニカを吹いたのは、昨日が初めてです」
「それ以前にもあの場所へ行ったことは?」
「…はい。あります。一週間くらい前から…」
「目的は?」
「………」
またか…。森下は、時折黙り込む少年に疑念を持ちながらも質問を変えた。
「どうしてあの公園なの?公園なら、君んちの近くにもあるぞ?」
「それは…」
「…正直に言って?…」
「…聴かせてあげたくて…」
「誰に?」
「…ある人に…」
「ある人…。誰?好きな子かな?あの近所の子?」
「…まあ、そんなとこかな…」
「そうか。どうして、その子に直接会って聴かせてあげなかったの?あんな所で吹いてても聴こえないんじゃないかな?直接会えない理由でも?もしかして、片思いとか…」
「…………」
また黙秘か…。
「あ、余計な詮索は野暮だね。ごめんごめん。じゃあ…誰か他に、君がハーモニカ吹いているところを見てた人は?」
「分かりません…。夢中で吹いてたから…」
「うーん…」
もしかして、"白"か?…。
森下は、この少年の話が作り話のようには思えなかったが、何か隠していることは確かで、釈然としない。少し苛ついたように、オールバックの髪をクシャクシャッと掻いた。
家を出る間際に見せた、この少年の不自然な様子も引っかかる。
トントン…
ガチャッ!
ノックの返事を待たずして、ドアが開く。
入ってきたのは、部下の刑事だった。
森下の耳元に近づき、小声で耳打ちを始めたが、聖には漏れ聞こえていた。
「聞き込みしたところ、昨夜ハーモニカを聴いたと言う人が…。今、隣の部屋に来てもらってます」
「すぐ行く。ここを頼む」
森下が隣の部屋に入ると、白髪の上品な老婦人が生意気そうな白いプードルを抱いて座っていた。
「わざわざ、ご足労頂きましてありがとうございます。私は昨夜の中條邸の放火事件を担当しております森下と申します」
「ご苦労様です。私は、山下 豊子と申します」
老婦人は、おっとりとした物言いで、丁寧にお辞儀をした。