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口琴
第16章 妹の体温
液晶の青白い光が、少年の凛々しい顔を照らしていた。

長い指が、スマホの画面をスクロールさせる。

グループLINEの吹き出しから次々に送られてくるメッセージやスタンプ。

  ーーーーーーーーーー

(やっちん)『え!もうはじまってんの?』18:05

(千夏)『おせーよwww』18:07

(みわ)『盛り上がってるよぉ~(笑)MerryX'mas!』18:08

(陸人)『ひじき~!今どこ~??』18:15

(みわ)『早くぅー!あと、やっちんとひじきだけだよぉ~』18:16

(聖)『わりぃ。俺やっぱ、今日パス』18:20既読4

(陸人)『どした?!』18:22

(聖)『ん、ちょっとな…。ほんとわりぃ。みんな楽しんでな?』18:23既読4

(陸人)『え~!なんだよ、それ!(-_-)ひじきの誕生会も兼ねてんだぜ?主役が来ねぇなんて、ありえねぇし』18:25

(やっちん)『ひじき、来ねぇの?腹でも壊したか?www』18:32

(聖)『ま、そんなとこwww』18:33既読4

(千夏)『やっちん!なにやってんの?』18:37

(やっちん)『はい。向かってます』18:37

(みわ)『残念だけど仕方ないね(笑)ひじき17歳!Happy Birthday!』18:40

(聖)『あざっす(^-^)v みんなごめんな』18:41既読4

  ーーーーーーーーーー

スマホを机の教科書の上に投げると、ベッドへ大の字になって寝転がった。

長い手足は、今にもシングルベッドからはみ出しそうだ。

目を瞑ると、ベッドサイドの目覚まし時計の秒針の音が、いやに耳につく…。

聖は、有名進学校に通う高校二年生。

今日、十七歳の誕生日を迎えた。

たった一人で…。

友達と、カラオケBOXでのクリスマスパーティーの予定をドタキャンしたのは、急用ができた訳でも、体調不良でもない。
ただ何となく、バカ騒ぎする気分ではなかったから。

両親は、毎年恒例のクリスマスコンサートで留守だ。

目覚まし時計の隣には、黒い革製のハーモニカケースが、すっかり白い埃を被っていた。

あの日から吹いていない…。

吹く意味を失ったから…。

聖はベッドから半身を起こすと、おもむろにケースを手に取った。

指で埃に書いた名前…

『つぼみ』


ピン…ポーン…

玄関でチャイムが鳴った…
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