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口琴
第16章 妹の体温
「どうした?座れよ」

「…ん…ありがと…。お父さんやお母さんは?」

「あぁ、恒例のドサ回り。明後日まで帰らないんだ」

「そう…。お邪魔してもいいの?…」

「いいに決まってんだろ?遠慮すんな。ほら」

躊躇って突っ立ったままの蕾に、聖がソファへ座るように促すと、蕾は遠慮がちに腰を下ろした。

「…………」

「…………」

沈黙が続いた。
改まると何だかお互いに気恥ずかしい…

「…あのさ…」
「…あの…」

同時に口を開く。

ハッとして見つめ会うと、またお互いにプッと吹き出した。

「…聖君…ありがとう。お礼が言いたくて…どうしても、どうしても逢ってお礼を言わなくちゃって…」

「いいよ…そんなの…。それよりさ…元気だったのか?…」

「うん。元気だっよ?聖君は?」

「俺は、ずっと元気」

「そっか…良かった」

それから二人は、今の生活や学校、友達の話など、尽きることのない話で、会えなかった日々を埋めようとした。

しかし、あの事件の事には、二人とも触れようとはしない。

「今日、お誕生日だね?十七歳。おめでとう」

「…ありがとう…」

「そうだ!プレゼント…」

そう言いながら、鞄を開けようとした蕾の手を聖が止めた。

「ん?」

不思議そうに、聖を見上げる蕾。

「今日は、クリスマスイブ。二人でパーティーしようか?」

「うん!」

蕾は大きく頷いて、満面の笑みで微笑んだ。

「でも、ケーキとかないや…。一緒に買いに行こ?」

「うん!」


すぐそこのコンビニ。

雪の降る道を二人で歩く。

相合い傘が照れくさい…。

付かず離れずの微妙な距離。

コンビニ、もう少し遠ければいいのに…。


「なあ…」

「ん?」

聖を見上げる。

前を向いたままの聖。

聖君、こんな背、高かったっけ…。


「…泊まってけよな…」

「…あ…でも…私、今夜キミちゃんのお友達んちに…」

「一緒にいたい。お前と」

少し強い口調の聖に、蕾の胸はまた"キュン"と鳴った。

コンビニで、クリスマス仕様に飾られたイチゴのショートケーキや、お菓子、ジュースなどを買って店を出る。

コンビニ横にある公衆電話。蕾はプッシュホンを押す。

ドキドキしていた…

ガチャン…

『はい。あすなろの家です』

キミちゃんの声…。
少し後ろめたい気持ちで、おずおずと口を開いた。
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