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口琴
第16章 妹の体温
「…あの…キミちゃん?…私…蕾…」
『蕾!今、どこ?心配してたんだから!工藤さんから連絡があって、あんたからまだ電話が来ないって…だから私、あんたが変な事に巻き込まれたのかもって…』
「ごめんなさい!もっと早く電話しなきゃいけなかったのに…。少しでも早く逢いたくて…お礼が言いたくて…私…」
『…ふぅ…。それで?…逢えたの?彼に…』
安心したように、一つ溜め息をついたキミ子は、いつもの優しい声に戻った。
「…うん…。それでね?…今日はもっと色んな事話したくて…。工藤さんには、今から電話して謝ります…」
『え?それって…彼の家に…泊まるってこと?…』
「…うん…」
『……………』
キミ子の沈黙が何を意味しているのか、蕾には分かっていた。
「…キミちゃん…」
『…いいよ。分かった。工藤さんには私から連絡しとく…』
「え?怒らないの?…」
『怒っても、変わらないんでしょ?自分の気持ち。蕾は以外と頑固だからね?…フフッ』
「キミちゃん…信じてくれて、ありがとう…」
『いいよ。それから梓、プレゼントのマフラー喜んでたよ?もうマフラー巻いたまんま寝ちゃった。アハハッ』
「…そっか…よかった。心配かけてごめんね?…それじゃ…あっ!…」
受話器を置こうとしたその時、聖が横から受話器を取り、自分の耳にあてがった。
「はじめまして。大崎 聖と言います。俺のせいで、心配かけてすみませんでした。蕾を…いや蕾さんを引きとめたのは俺です。でも今日だけ、今日だけ一緒にいさせて下さい。お願いしますっ!」
『はじめまして。吉田 キミ子です。そっか…君が聖君か…。蕾を宜しくお願いします』
これで良かったのかどうか、キミ子にも分からなかった。
ただ、二人を信じてやりたいと思ったのだ。
来た道を帰る。
「寒いね…」
蕾が呟いて、白い息で手を温めている。
何も言わずにその手をそっと握り、自分のコートのポケットに入れる聖。
蕾が驚いて見上げると、聖は耳を紅くして、無言で真っ直ぐ前を向いていた。
「…あったかい…」
「こんなことするヤツ、ほんとにいるのかよ、気持ち悪りぃって思ってたクセに…ここにいた…」
「アハハッ!…聖君、優しいね?…」
「それ、知ってる」
「アハハッ!」
ポケットの中の繋いだ手から、お互いの温もりと心を通わせ合った。
『蕾!今、どこ?心配してたんだから!工藤さんから連絡があって、あんたからまだ電話が来ないって…だから私、あんたが変な事に巻き込まれたのかもって…』
「ごめんなさい!もっと早く電話しなきゃいけなかったのに…。少しでも早く逢いたくて…お礼が言いたくて…私…」
『…ふぅ…。それで?…逢えたの?彼に…』
安心したように、一つ溜め息をついたキミ子は、いつもの優しい声に戻った。
「…うん…。それでね?…今日はもっと色んな事話したくて…。工藤さんには、今から電話して謝ります…」
『え?それって…彼の家に…泊まるってこと?…』
「…うん…」
『……………』
キミ子の沈黙が何を意味しているのか、蕾には分かっていた。
「…キミちゃん…」
『…いいよ。分かった。工藤さんには私から連絡しとく…』
「え?怒らないの?…」
『怒っても、変わらないんでしょ?自分の気持ち。蕾は以外と頑固だからね?…フフッ』
「キミちゃん…信じてくれて、ありがとう…」
『いいよ。それから梓、プレゼントのマフラー喜んでたよ?もうマフラー巻いたまんま寝ちゃった。アハハッ』
「…そっか…よかった。心配かけてごめんね?…それじゃ…あっ!…」
受話器を置こうとしたその時、聖が横から受話器を取り、自分の耳にあてがった。
「はじめまして。大崎 聖と言います。俺のせいで、心配かけてすみませんでした。蕾を…いや蕾さんを引きとめたのは俺です。でも今日だけ、今日だけ一緒にいさせて下さい。お願いしますっ!」
『はじめまして。吉田 キミ子です。そっか…君が聖君か…。蕾を宜しくお願いします』
これで良かったのかどうか、キミ子にも分からなかった。
ただ、二人を信じてやりたいと思ったのだ。
来た道を帰る。
「寒いね…」
蕾が呟いて、白い息で手を温めている。
何も言わずにその手をそっと握り、自分のコートのポケットに入れる聖。
蕾が驚いて見上げると、聖は耳を紅くして、無言で真っ直ぐ前を向いていた。
「…あったかい…」
「こんなことするヤツ、ほんとにいるのかよ、気持ち悪りぃって思ってたクセに…ここにいた…」
「アハハッ!…聖君、優しいね?…」
「それ、知ってる」
「アハハッ!」
ポケットの中の繋いだ手から、お互いの温もりと心を通わせ合った。