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口琴
第16章 妹の体温
テーブルに、お菓子やケーキが並んだ。

「メリークリスマス!」

「聖君、お誕生日おめでとう!」

「ありがとう」

二人きりのささやかなパーティー。

蕾にとっては、幸せすぎる時間。

「聖君…さっきはありがとう。キミちゃんと話してくれて。私、嬉しかった…」

「いや…俺もちゃんと話したいって思ったから。でも、まだきっとキミ子さん心配してると思う…」

「うん…そだね…。帰ったら、ちゃんと謝る…。
私、ほんとはね?ちょっぴり恐かったの…。突然来て、聖君困らないかなって。もう、私なんか忘れちゃって、知らん顔されたらどうしようって…。」

「バーカ。そんな訳ねぇだろ?」

「うん…。でもね?すっごく心配だったけど…お礼を言わなくちゃって。あの時…私を助けようとしてくれたのは、聖君だけだった。誰も…誰も…私を…」

触れたくなかった過去に、蕾の声が詰まる。

「もう、いいよ。それ以上何も言うな。それに俺はお前を助けられなかった…。結局…。
あの時、俺が警察なんかに捕まらなきゃ、離れ離れにならずにすんだのに…。ごめん…。
捕まった俺を助けてくれたのは、お前だった。ハーモニカを持って警察まで…。お礼を言わなきゃいけないのは俺の方だ。ありがとう」

「…きっと、あれで良かったんだよ。どちらにしても私達、こうなる運命だったと思う…。でももう悪い人はいない。パパだって…。それに、今こうして聖君に逢えた。私こそ…ありがとう」

「そうだよな。もう大丈夫なんだよな…」

「うん」

「…蕾…。お前の…その…お母さんは?…」

聖は少し躊躇いながら訊ねた。

「…ママは…あれから逮捕されちゃったんだけど、その後シャクホウされたの。それからパパとは離婚したわ。私と梓は、ママの名字に変わったの。『津川』って。でも、ママは心が病気になっちゃって…。今は、明南岬のホスピタルに入ってるの。明日、ママのお見舞いに行くんだ…」

「…そうだったのか…。大変だったな…」

「…へいき。私も梓もあすなろの家が大好き。みんな親切で、優しくて、おもしろくて。だから頑張ろうって」

「…そっか…良かったな…」

「…ん…」

蕾が柔らかく微笑む。

聖はその笑顔に、蕾の強さを見た。そして、ウジウジと悩み、両親に反発ばかりしていた我儘な自分を心底恥じた。
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