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口琴
第16章 妹の体温
「そうだ!聖君、プレゼント。さっき渡せなかったから」

「プレゼントなんていいよ。俺…そんなの貰うの慣れてない。それに俺、何も用意してない…」

「いいの。これは、お誕生日のプレゼントなんだから」

そう言って、緑のリボンの小さな包みを渡した。

「…何?…」

「開けてみて?」

少し恥ずかしそうに包みを開ける聖。

それはデニム生地で作ったハーモニカケース。
白い刺繍糸で"HIJIRI"のネームが施されている。

「お?ペンケース?名前入りじゃん。カッケー!」

「ちがっ!それ、ハーモニカケース!」

「へ?そうなの?俺、てっきり…」

「…やっぱ…変かな?…」

少し落ち込んだ様子の蕾。

「ありがと。スゲー嬉しいよ」

「ほんと?」

「やベーよ、これ。大切に使うよ」

「嬉しい。キミちゃんに教えてもらって、一生懸命作ったの」

蕾の頬が薔薇色に染まった。

それから二人は、他愛のない話に楽しく時を過ごした。

「もうこんな時間だ。蕾、先に風呂入って?」

「ほんとだ。もう十一時。でも…いいの?」

「ああ。俺は後で入る。それから今夜、お前は俺のベッド使っていいよ?」

「聖君は?どこで寝るの?」

「…俺は…ここで…」

ソファを指さす。

「そんなの悪いよ。私がソファで寝るから」

「いいんだ。遠慮すんな。ベッドの方がゆっくり眠れるから。でもちょっぴり男臭せぇかも…。ま、そんなの気にすんな。ソファよりマシだろ?」

「ウフフッ。ありがとう。じゃ、先にお風呂入るね?」

蕾が風呂に入り、暫くしてから聖は脱衣所にバスタオルを持ってきた。

"タオル置いておくぞ?"そう声をかけて、すぐに出ていくつもりだった。

磨りガラスの向こうに揺れる影。

ドクン…

聖の胸が音をたてる。

前にも似た事があったな…

シャワーの音が、更に聖を揺さぶる。

ドクン…ドクン…

脱衣籠に、脱いだ服や下着がきちんと畳まれている。

セーター、スカート、淡いピンクのチェックのスポーツブラとお揃いのショーツ。

…こういうの着けてるんだ…

ドクン…ドクン…ドクン…

触ってみたい…

いけない衝動が、聖の理性を打ち砕いていく。

震える手を伸ばした。

ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…

「聖君?」

エコーの掛かった声に、ハッと我に返った。

何やってんだ…俺…。変態か…。
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