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口琴
第17章 口琴
「…ママ…」

蕾の声は震えていた。

梨絵は音をたてて椅子から立ち上がる。

「…蕾…来てくれたの?…」

その姿は少し痩せていて、かつての美しさは残っていなかったが、以前よりも顔色が良く見える。
蕾を見て瞳を潤ませる梨絵は、あの時の優しい母だ。

両腕を広げる母の胸に、蕾は飛び込んだ。

「蕾…逢いたかった…。よく来てくれたわね?」

「ママ…」

言葉が涙で詰まる。

「大きくなったね?髪を切ったの?似合ってるわよ?学校楽しい?お友達できた?キミ子さんは優しくしてくれる?あずちゃんは?来なかったの?」

梨絵は蕾を抱き締めたまま、一気に色々な質問をする。

「そんなにっ…ヒクッ…ヒクッ…いっぺんに…ウゥ…答えらんないよぉ~!ウァーーーン…」

胸に詰まっていた塊が砕け散り、涙が一気に押し寄せて止まらなくなった。

梨絵は、蕾の頭を撫でながらいつまでも抱き締めた。

「…ヒック…ママ…ありがとう…。もう、大丈夫…」

「蕾?…今までごめんね?…こんなバカなママで…。蕾に酷いことを…。母親の資格なんてないよね…」

「ママ…ママは悪くないよ?…私…ママが大好き」

「蕾…ありがとう。ごめんなさい…。ママ…早く良くなって、蕾と梓と三人でやり直したい…」

「うん…。待ってるよ?…」

それから二人はお互いの生活ぶりを話した。

母は、付き添いの人と一緒なら、外出もできることや、屋上にあるガーデニングのお手伝いをしていることなどを話してくれ、蕾はホッと安心した。

「そうだ。ママにクリスマスプレゼント持ってきたの」

「え?ほんとに?嬉しい!」

鞄からリボンのついた包みを取り出した。

「何?」

「…開けてみて?」

梨絵が包みを開ける。

「わぁ、すごい!これ蕾の手編み?イニシャルも入ってる」

「ウフッ…あずちゃんとお揃いのマフラー」

「ありがとう…蕾」

梨絵の目尻がキラリと光った。

「…そうだ。蕾にいいものあげる。その棚の中にある箱を持ってきて?」

「なあに?…ここ?…」

書棚の下の扉を開ける。

小さな箱を取り出そうとしたとき、手前にあった箱や袋がなだれ落ちてきた。

「あ、ごめんなさい…」

そう言って、元に戻そうとした袋から、一足のスニーカーが転がり落ちた。

見覚えのあるスニーカー。

『4ー3 大崎 聖』
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