この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
口琴
第17章 口琴
「ママ!…」
手を伸ばす母のそばへ駆け寄った。
「気がついたの?良かった…。ごめんね?私…ママを苦しめてばかり…。私なんか…生まれなかった方が良かったね?…生まれてきて…ごめんなさい…」
「…蕾!」
梨絵は蕾の手を引き寄せ、抱き締めた。
強く、強く。
「何言ってるの!あなたは私の大切な娘!それなのにママ、あなたに辛い思いばかりさせて…ごめんね?ママがもっとしっかりしなきゃいけないのに…ごめんね…ごめんね…」
「…ママ…」
蕾の頬に流れる涙を、優しい母の指が拭った。
蕾に笑顔の光が射し、梨絵もまた、柔らかく微笑んだ。
「ママ…もう体、平気?…」
「大丈夫。もう落ち着いたわ?まだ、時々こんな風になることはあるけど、随分良くなったの」
「あんまり、無理しないでね?…」
「ありがとう。あぁ、早く元気にならなきゃ。ね?」
「うん!」
蕾に笑顔が戻る。
梨絵は、意を決して靴について話そうとした。
「…蕾…この靴なんだけど……」
そこから言葉が続かない。
すると蕾が、靴を大切そうに抱き抱えながら話し始めた。
「…この靴…私を助けてくれた人の靴なの…」
蕾は椅子にゆっくりと座り、これまでのことを全て梨絵に話し始めた。
ハーモニカの懐かしいメロディーに導かれて、聖と出会ったこと、苦しみの中で、聖が心の支えになってくれたこと、一生懸命、自分を助けようとして、聖自身も一緒に苦しんでくれたこと…。
梨絵は黙って目を閉じ、静かに蕾の話を聞いていた。
その目尻には涙が光っていた。
「…でももう…聖君は…私のこと…」
言葉はそこで途切れた。
「…ママ…。人の気持ちって、すぐに変わっちゃうものなの?…」
もしかして聖は、自分との関係を知っていたのだろうか…
だとしたら…
そんな思いが梨絵の頭を過った。
「…そうね…確かにそう言うこともあるかも。でも…その人のことを愛しているからこそ、辛い道を選んで、変わろうとすることもあるかも知れない…」
「…愛しているのに?…分からない…どうして?…」
怪訝そうに首を傾げる蕾を見て、梨絵はベッドからゆっくり下りると、蕾を優しく抱き締めた。
「そうだ、蕾。ママの育てたお花を見てくれない?」
「お花?」
「そう。さあ、行きましょ?」
それから、コートを羽織ると、蕾を連れて部屋を出た。
手を伸ばす母のそばへ駆け寄った。
「気がついたの?良かった…。ごめんね?私…ママを苦しめてばかり…。私なんか…生まれなかった方が良かったね?…生まれてきて…ごめんなさい…」
「…蕾!」
梨絵は蕾の手を引き寄せ、抱き締めた。
強く、強く。
「何言ってるの!あなたは私の大切な娘!それなのにママ、あなたに辛い思いばかりさせて…ごめんね?ママがもっとしっかりしなきゃいけないのに…ごめんね…ごめんね…」
「…ママ…」
蕾の頬に流れる涙を、優しい母の指が拭った。
蕾に笑顔の光が射し、梨絵もまた、柔らかく微笑んだ。
「ママ…もう体、平気?…」
「大丈夫。もう落ち着いたわ?まだ、時々こんな風になることはあるけど、随分良くなったの」
「あんまり、無理しないでね?…」
「ありがとう。あぁ、早く元気にならなきゃ。ね?」
「うん!」
蕾に笑顔が戻る。
梨絵は、意を決して靴について話そうとした。
「…蕾…この靴なんだけど……」
そこから言葉が続かない。
すると蕾が、靴を大切そうに抱き抱えながら話し始めた。
「…この靴…私を助けてくれた人の靴なの…」
蕾は椅子にゆっくりと座り、これまでのことを全て梨絵に話し始めた。
ハーモニカの懐かしいメロディーに導かれて、聖と出会ったこと、苦しみの中で、聖が心の支えになってくれたこと、一生懸命、自分を助けようとして、聖自身も一緒に苦しんでくれたこと…。
梨絵は黙って目を閉じ、静かに蕾の話を聞いていた。
その目尻には涙が光っていた。
「…でももう…聖君は…私のこと…」
言葉はそこで途切れた。
「…ママ…。人の気持ちって、すぐに変わっちゃうものなの?…」
もしかして聖は、自分との関係を知っていたのだろうか…
だとしたら…
そんな思いが梨絵の頭を過った。
「…そうね…確かにそう言うこともあるかも。でも…その人のことを愛しているからこそ、辛い道を選んで、変わろうとすることもあるかも知れない…」
「…愛しているのに?…分からない…どうして?…」
怪訝そうに首を傾げる蕾を見て、梨絵はベッドからゆっくり下りると、蕾を優しく抱き締めた。
「そうだ、蕾。ママの育てたお花を見てくれない?」
「お花?」
「そう。さあ、行きましょ?」
それから、コートを羽織ると、蕾を連れて部屋を出た。