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口琴
第17章 口琴
手紙の内容は、あの事件で聖をはじめ、惣一や朋香にも多大な迷惑をかけたことへの謝罪に始まり、離婚後、惣一や聖の人生を狂わせてしまったことや、朋香への感謝の言葉が綴られていた。
そして、事件に聖を巻き込んでしまったことを侘び、聖が人として立派に成長していたことの喜びと、ここまで育ててくれた惣一と朋香への感謝を述べていた。
それに比べ、自分の不甲斐なさを改めて思い知らされたこと。母として、人として最低な自分を心底悔いていた。
そして手紙は、娘の蕾のことへ。
『……あの頃の娘には、頼れるものはなく大人達の身勝手な道具のような扱いでした。そんな娘に、優しく手を差し伸べてくれたのが聖君でした。娘にとって聖君は、たった一人の生きる支えだったのです。
二人はいつしか惹かれ合ったのでしょう。それは、幼い恋に過ぎなかったかも知れませんが、娘にとっては宝物のような恋でした。
聖君も娘のことを憎からず思っていてくれていたことは、娘の口振りから想像ができました。
しかし、二人は離れてしまったのです。それは娘にとっては身を裂くほどに苦しかったようで、未だに心に穴が空いたままなのです。
聖君の気持ちが、本当に娘から離れてしまったのでしたら、仕方のないことですが、もし、そうでないのなら…。もっと他の理由で別れてしまったのなら…。
こんなこと、親がしゃしゃり出る幕ではないのですが、二人のことで、どうしても私には話さなければならないことがあるのです。
それは、今ここに書くことはできないのですが、お会いしてお話ししたいのです。惣一さんにも、朋香さんにも、そして聖君にも聞いて頂きたいのです。
ほんの少しでも、お会いすることはできないでしょうか?
今私が、子ども達の為にできる贖罪は、もう、これしかないのです。
どうか、この願いをお聞き入れ頂けますよう、宜しくお願い申し上げます。
ご連絡、いつまでもお待ちしております。
こんな不躾な手紙を、どうかお許し下さい。
かしこ
ー連絡先ー
明南岬メンタルホスピタル
TEL(○○ー○○○ー○○○○)
523号室 津川 梨絵』
そして、事件に聖を巻き込んでしまったことを侘び、聖が人として立派に成長していたことの喜びと、ここまで育ててくれた惣一と朋香への感謝を述べていた。
それに比べ、自分の不甲斐なさを改めて思い知らされたこと。母として、人として最低な自分を心底悔いていた。
そして手紙は、娘の蕾のことへ。
『……あの頃の娘には、頼れるものはなく大人達の身勝手な道具のような扱いでした。そんな娘に、優しく手を差し伸べてくれたのが聖君でした。娘にとって聖君は、たった一人の生きる支えだったのです。
二人はいつしか惹かれ合ったのでしょう。それは、幼い恋に過ぎなかったかも知れませんが、娘にとっては宝物のような恋でした。
聖君も娘のことを憎からず思っていてくれていたことは、娘の口振りから想像ができました。
しかし、二人は離れてしまったのです。それは娘にとっては身を裂くほどに苦しかったようで、未だに心に穴が空いたままなのです。
聖君の気持ちが、本当に娘から離れてしまったのでしたら、仕方のないことですが、もし、そうでないのなら…。もっと他の理由で別れてしまったのなら…。
こんなこと、親がしゃしゃり出る幕ではないのですが、二人のことで、どうしても私には話さなければならないことがあるのです。
それは、今ここに書くことはできないのですが、お会いしてお話ししたいのです。惣一さんにも、朋香さんにも、そして聖君にも聞いて頂きたいのです。
ほんの少しでも、お会いすることはできないでしょうか?
今私が、子ども達の為にできる贖罪は、もう、これしかないのです。
どうか、この願いをお聞き入れ頂けますよう、宜しくお願い申し上げます。
ご連絡、いつまでもお待ちしております。
こんな不躾な手紙を、どうかお許し下さい。
かしこ
ー連絡先ー
明南岬メンタルホスピタル
TEL(○○ー○○○ー○○○○)
523号室 津川 梨絵』