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口琴
第17章 口琴
…その夜…

惣一は、先にベッドに入って眠ろうとしている朋香の隣に潜り込み、朋香の耳許で囁いた。

「朋香、さっきはありがとう」

「やだっ、なぁに?」

「内心は複雑だろう?…」

「…そうね…平気って言えば嘘になるかも。でもね?梨絵の話が、聖にとってどんな話なのか分からないけど、いつか、ちゃんと会って話した方がいいって思ってたの。それは、あの子の事件があったからとか、聖があの子に恋愛感情を抱いているからじゃなくて、聖がいつか本当の母親に会いたいと言ったら、そうしようって決めてたの。まさか、こんな形で会わせることになるとは思ってなかったけどね?ウフフッ」

「…朋香…」

「それに、梨絵の人生を狂わせたのは、私達にも責任があるわ?」

惣一は、バツが悪そうに、朋香に背を向けた。

「昔は、あんなに仲が良かった友達だった筈なのに…。どこかで歯車が狂っていったのよ…」

「…ああ…」

「梨絵がオーストリアから戻って、また私達のすぐ近くで暮らしていたことも、苦しんでいたことも知らず、私達、何もしてあげられなかった…」

「…ああ、そうだな…。それにしても梨絵の話って、何だろうな?…聖にとって良いことならいいんだが…不安だよ…」

「梨絵は、『子ども達の為に』ってそう言ってるから…。私は悪いことではないと思うんだけど…」

「…そうだといいんだが…」

「…大丈夫よ。きっと…」

「…朋香…ありがとう。…朋香…」

惣一は朋香の横顔を見つめた。

「なぁに?どうしたの?そんなに見ないで?」

「朋香…愛してるよ…」

惣一は朋香の頬に手を当てて、顔を寄せる。

「え?もう、やだっ。惣一さんったら恥ずかしいからやめて。私達いくつだと思ってんの?」

「ん?そんなのどうだっていいさ。愛してる。朋香…子ども…作るか?…」

「え?冗談でしょ?ンンッ…!」

惣一の唇が朋香の唇に重なる…。

「……アァ……」




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