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口琴
第17章 口琴
リビングのソファーに案内され、緊張しながら座る。

そこに聖の姿はなかった。

聖が現れたら、どんな顔をすればいいのだろう…。

覚悟を決めてきたつもりだが…。

なんとも気まずい空気と沈黙が、三人を襲う。

すると、朋香が慌てて立ち上がり

「あ。お茶忘れてた!ごめんなさい!」

「いえ、お構い無く…」


紅茶と一緒に、梨絵の手土産のフィナンシェがテーブルに出され、梨絵は丁寧に頭を下げた。

「こ、この度は…会って下さり、とても感謝しております。ありがとうございます」

「梨絵…そんなに堅くならないで?ね?」

「…………」

梨絵は、少し狼狽えながら二人の顔を見た。

「そうだな…そんな風に畏まって話されると、こっちまで緊張するよ…」

「あ…ありがとう…」

梨絵は少し頬を染めて、また頭を下げた。

「梨絵…こちらこそ、ありがとう。そして、ごめんね?…」

「朋香達が謝ることなんて、何もないわ?謝らなければいけないのは、私の方…。色々ご迷惑や、ご心配をかけて、本当にごめんなさい。」

「…それより、体調はどう?」

「ええ、ありがとう。少しずつ良くなってるの。付添人となら、こうして外出もできるの。あ、今日もその付添人に送ってもらって…」

「そう。良かった…」

「私のしたことは、決して許されることではないの…。でも…でもね?…あの子は…あの子には、何の罪もないのよ…全部私の責任…」

梨絵は両手で顔を覆い、声を詰まらせた。

「梨絵…」

朋香は梨絵の背中を擦った。

惣一は、何も言わず俯いていた。

「私達も、あなたの力になってやれなくてごめんなさい。あなたの人生を狂わせたのは、私達にも責任があるわ?」

「朋香、惣一さん、そんなことを言わないで?私が惣一さんと別れることになったのは、私のせいなんだから。二人は悪くないの」

「梨絵…」

朋香と惣一の胸は、熱く震えた。

「私が、今日お邪魔したのは、子ども達のこと…」

「あぁ、そうだったな。では、聖を呼んでも?」

惣一が言の言葉に、梨絵の胸がドキン!と音をたてる。

「そ、そうね。今部屋にいるの。呼んできます」

そう言って、二階へと向かう朋香の後ろ姿を、高鳴る鼓動を押さえながら見つめた。
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