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口琴
第17章 口琴
朋香が慌てて駆け寄り、背中を擦った。
「ああ、そ、そうだな。少し横になった方がいい…」
惣一も突然の事態に動揺を隠せない。
「…ハァッ…ご、ごめんなさいっ…だ、大丈夫…少しすれば…ハァッ…治まるから…ハァッ…」
バッグからピルケースを取り出し、水で薬を一錠流し込んだ。
「大丈夫?梨絵…」
「ええ。…ごめんなさい…取り乱してしまって…」
暫くして発作が治まった梨絵は、静かに語り始めた。
「…私は…取り返しのつかない罪を犯した…。娘を…あんな酷い目に…。
娘は、私の心の弱さ故に、大人の冷酷非道な欲望の犠牲になってしまったの…。私さえしっかりしていれば…私がこんなに馬鹿でなかったら…娘をあんな目に遭わせることはなかったのに…。
娘は、幼い躰と心を傷つけられ、誰にも頼ることもできず、孤独の中で悩み、苦しんでいた…。
私は母であるにも関わらず、夫の暴力に怯え、娘を助けることができなかった…。
酷いでしょ?…私には、母親の資格なんて微塵もない…。
聖君の言う通りよ?…
私は、一生この罪を背負って生きて行くことに決めたの。
傷ついた娘の心の支えになってくれたのが聖君、あなただと分かった時、私は……私は……ぅっっ…」
また、涙が止めどなく溢れ、言葉が途切れた。
「…梨絵…」
朋香が梨絵の肩を抱く。
「…ほんとに…ありがとう…ぅっ…」
梨絵は、涙で声を詰まらせながら、話しを続けた。
「娘の為に私ができることは、早く体を治して働くこと。
そして…これは、娘を救うことになるかどうか分からないけれど…どうしても話しておきたくて…」
そう言って梨絵はバッグの中から、何か手紙のような物を取り出した。
よく見ると、それは手紙ではなく、少し黄ばんだ五線紙。綺麗に折り畳まれ、何かを包んでいる。
梨絵は、それを静かに開いた。
包まれていたのは、古ぼけた一枚の写真。
「これ、誰だか分かるわよね?」
梨絵は惣一に、写真を渡した。
惣一達は、食い入るように写真を見る。
「…ダニエル…か?…。ん?…この隣の女性は?…」
「ほんと、ダニエルだわ?あら?…この女性…お腹が…」
写真に写るのは、蕾の実父であるダニエルと、隣に座る白人の妊婦。とても美しい顔立ちで、艶やかに流れるような黒髪の女性だった。
「ああ、そ、そうだな。少し横になった方がいい…」
惣一も突然の事態に動揺を隠せない。
「…ハァッ…ご、ごめんなさいっ…だ、大丈夫…少しすれば…ハァッ…治まるから…ハァッ…」
バッグからピルケースを取り出し、水で薬を一錠流し込んだ。
「大丈夫?梨絵…」
「ええ。…ごめんなさい…取り乱してしまって…」
暫くして発作が治まった梨絵は、静かに語り始めた。
「…私は…取り返しのつかない罪を犯した…。娘を…あんな酷い目に…。
娘は、私の心の弱さ故に、大人の冷酷非道な欲望の犠牲になってしまったの…。私さえしっかりしていれば…私がこんなに馬鹿でなかったら…娘をあんな目に遭わせることはなかったのに…。
娘は、幼い躰と心を傷つけられ、誰にも頼ることもできず、孤独の中で悩み、苦しんでいた…。
私は母であるにも関わらず、夫の暴力に怯え、娘を助けることができなかった…。
酷いでしょ?…私には、母親の資格なんて微塵もない…。
聖君の言う通りよ?…
私は、一生この罪を背負って生きて行くことに決めたの。
傷ついた娘の心の支えになってくれたのが聖君、あなただと分かった時、私は……私は……ぅっっ…」
また、涙が止めどなく溢れ、言葉が途切れた。
「…梨絵…」
朋香が梨絵の肩を抱く。
「…ほんとに…ありがとう…ぅっ…」
梨絵は、涙で声を詰まらせながら、話しを続けた。
「娘の為に私ができることは、早く体を治して働くこと。
そして…これは、娘を救うことになるかどうか分からないけれど…どうしても話しておきたくて…」
そう言って梨絵はバッグの中から、何か手紙のような物を取り出した。
よく見ると、それは手紙ではなく、少し黄ばんだ五線紙。綺麗に折り畳まれ、何かを包んでいる。
梨絵は、それを静かに開いた。
包まれていたのは、古ぼけた一枚の写真。
「これ、誰だか分かるわよね?」
梨絵は惣一に、写真を渡した。
惣一達は、食い入るように写真を見る。
「…ダニエル…か?…。ん?…この隣の女性は?…」
「ほんと、ダニエルだわ?あら?…この女性…お腹が…」
写真に写るのは、蕾の実父であるダニエルと、隣に座る白人の妊婦。とても美しい顔立ちで、艶やかに流れるような黒髪の女性だった。