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口琴
第17章 口琴
「そう、これは蕾の本当の父、ダニエル…。そして…この女性はダニエルの亡くなった奥さん。ルイゼ。娘の…蕾の…産みの母親よ?…」
「…え?…じゃぁ…」
朋香が驚いて声をあげる。
惣一と聖は、まだ意味が咀嚼できず、眉をひそめた。
「…そう…。私は蕾の本当の母親ではないの。蕾はダニエルと、この美しい女性、ルイゼの娘…。
少し話が長くなるけど…聞いて?…お願い…」
惣一達は、固唾を飲んで頷いた。
「…私は惣一さんと離婚してすぐに、オーストリアへ発った。
どうしても、ダニエルを忘れることができなくて…。
私が彼に再開した時、彼には幼い娘がいた。蕾はまだ赤ん坊だったわ?そして…蕾の母親、ルイゼは既に亡くなっていたの…。蕾を産んで、すぐだったみたい…。
彼女には、先天性の心臓疾患があり、医師からは出産は無謀過ぎると言われていたらしいの。でも、彼女は子どもを望んだ。
自分の命を捨ててでも、子どもを産みたいと…。周囲の反対を押しきって、彼女は娘を出産し、そして命を落とした…」
梨絵は、一枚の薄っぺらな紙切れをテーブルに広げた。
紙切れの頭には『GEBURTSURKUNDE(出生証明書)』と書かれていた。
向こう側が透けて見えそうな薄っぺらなその用紙には、名前、生年月日、出生時刻、住所、そして両親の欄にはダニエルとルイゼの名前が。最後に医師と市長のサインがあり、備考欄に『母死亡』と記載されていた。
「これが証拠よ?…。
蕾の翡翠の瞳は、父ダニエル譲り。そして蕾の美しい黒髪は、母、ルイゼにそっくり…」
聖は瞬きも忘れ、その写真を食い入るように見詰めた。
「…え?…じゃぁ…」
朋香が驚いて声をあげる。
惣一と聖は、まだ意味が咀嚼できず、眉をひそめた。
「…そう…。私は蕾の本当の母親ではないの。蕾はダニエルと、この美しい女性、ルイゼの娘…。
少し話が長くなるけど…聞いて?…お願い…」
惣一達は、固唾を飲んで頷いた。
「…私は惣一さんと離婚してすぐに、オーストリアへ発った。
どうしても、ダニエルを忘れることができなくて…。
私が彼に再開した時、彼には幼い娘がいた。蕾はまだ赤ん坊だったわ?そして…蕾の母親、ルイゼは既に亡くなっていたの…。蕾を産んで、すぐだったみたい…。
彼女には、先天性の心臓疾患があり、医師からは出産は無謀過ぎると言われていたらしいの。でも、彼女は子どもを望んだ。
自分の命を捨ててでも、子どもを産みたいと…。周囲の反対を押しきって、彼女は娘を出産し、そして命を落とした…」
梨絵は、一枚の薄っぺらな紙切れをテーブルに広げた。
紙切れの頭には『GEBURTSURKUNDE(出生証明書)』と書かれていた。
向こう側が透けて見えそうな薄っぺらなその用紙には、名前、生年月日、出生時刻、住所、そして両親の欄にはダニエルとルイゼの名前が。最後に医師と市長のサインがあり、備考欄に『母死亡』と記載されていた。
「これが証拠よ?…。
蕾の翡翠の瞳は、父ダニエル譲り。そして蕾の美しい黒髪は、母、ルイゼにそっくり…」
聖は瞬きも忘れ、その写真を食い入るように見詰めた。