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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第31章 第十二話 【花見月の別れ】 其の弐
「そいじゃ、お先に」
 そう言って数歩あるいたおさきが、つと振り返った。
「お彩ちゃん」
「はい?」
 お彩は突然呼ばれ、愕いて、おさきを見た。
 おさきの表情は、真剣そのものだった。
「あんたが帰ってきてくれて、良かった。おきわさんは、あのとおり気丈な女ひとだから、弱音なんて見せないけど、たった一人の倅を亡くしちまって、かなり落ち込んでると思うんだよ。おまけに、長患いの身で、つい先だって養生所から帰ってきたばかりだしね。皆、おきわさん一人じゃ、この先どうなることかと心配していたところに、あんたがひょっこりと帰ってきてくれた。
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