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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第32章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の壱
「ツ」
小さく呻いて指先を見やると、鮮血が溢れていた。どうやら、考え事に耽っていたゆえ、注意が逸れて包丁で指を切ってしまったらしい。全く料理人としては、あるまじき失態である。たとえ見習いとはいえ、許されることではない。この十日間というもの、お彩は喜六郎に朝から晩までみっちりと仕込まれる毎日が続いている。今までの仲居としての仕事の他に、空き時間は喜六郎から板前になるべく様々な事を教わっていた。
今日は初めて客に出す突出し(料理の最初に出す小鉢物など)を任せられ、お彩は張り切っていた。
喜六郎の見込んだとおり、お彩は料理にかけては天性のひらめきというか才能があった。
小さく呻いて指先を見やると、鮮血が溢れていた。どうやら、考え事に耽っていたゆえ、注意が逸れて包丁で指を切ってしまったらしい。全く料理人としては、あるまじき失態である。たとえ見習いとはいえ、許されることではない。この十日間というもの、お彩は喜六郎に朝から晩までみっちりと仕込まれる毎日が続いている。今までの仲居としての仕事の他に、空き時間は喜六郎から板前になるべく様々な事を教わっていた。
今日は初めて客に出す突出し(料理の最初に出す小鉢物など)を任せられ、お彩は張り切っていた。
喜六郎の見込んだとおり、お彩は料理にかけては天性のひらめきというか才能があった。