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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第32章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の壱
 元々、料理は好きだったし、母の死後は三度の食事の支度はすべてお彩がしていた。一人暮らしをするようになってからも、食事はこまめに作っていた。養女になる話まではまだ決心はつきかねているけれど、喜六郎ほどの板前から本格的に仕込んで貰えるというのは願ってもない話だと思う。
 喜六郎は若い頃は京の料亭で本格的に京料理を習ったことがあるといい、その腕前はなかなかである。ゆえに、喜六郎のこしらえる料理が単なる一膳飯屋に出すようなものではなく、見た目も味も良いと評判で、大店の旦那衆がわざわざ通ってくるほどなのも頷ける。
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