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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第32章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の壱
お彩は、この小さな飯屋に今度こそ本当の居場所と生き甲斐を見つけたような気がしていた。自分の生涯を賭けられるものー、それがここにあるように思えていた。
ーたとえ小さくとも良い。心に自分だけの花を咲かせるんだよ。
それが亡くなった母お絹の口癖だった。もしかしたら、自分はこの「花がすみ」で自分なりの花を咲かせることができるのではないか、そんな予感がしている。もちろん、一人前の板前になるには道は厳しいものがあるだろうことは覚悟している。見込みがあると褒めてくれるにも拘わらず、お彩は日に何度、喜六郎に叱り飛ばされているか知れたものではない。
ーたとえ小さくとも良い。心に自分だけの花を咲かせるんだよ。
それが亡くなった母お絹の口癖だった。もしかしたら、自分はこの「花がすみ」で自分なりの花を咲かせることができるのではないか、そんな予感がしている。もちろん、一人前の板前になるには道は厳しいものがあるだろうことは覚悟している。見込みがあると褒めてくれるにも拘わらず、お彩は日に何度、喜六郎に叱り飛ばされているか知れたものではない。