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第32章 第十三話　【花残り月の再会～霞桜～】　其の壱

　だが、自分が真剣に目指す目標に至るまでの苦労や努力なら乗り越えることはできる。今の苦労は何も喜六郎に強制されたものではなく、お彩自身が望んだものだからだ。そして、その努力や心意気を受け容れてくれる喜六郎という得難い師匠がいる。
　かつて京屋の内儀だった頃、お彩はお彩なりに良いご新造になろうと努力した。古参の奉公人にも自分から打ち解け、しきたりなども教わろうとしたけれど、それは結局無駄な努力に終わった。上女中のおみよを除いた、他の多くの奉公人は表の番頭や手代、丁稚までもが、そして奥向きの女中たちもがお彩を内儀として認めてはくれず、色香で主人市兵衛をたぶらかした新参の成り上がり者と蔑視した。