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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第32章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の壱
 この嫌な感じは何なのだろう。そう思った時、店の二階から降りてくる足音が聞こえてきた。
「お彩ちゃん、お美杷坊は、そこにいるのかい?」
 喜六郎の幾ばくかの戸惑いを潜ませた問いに、お彩は眼を見開いた。
「いいえ、お美杷なら、二階(うえ)でよく寝てますけど」
 刹那、喜六郎の将棋の駒を思わせるいかつい貌がスウと白くなった。
「二階にはいねえぜ」
「えー」
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