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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第32章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の壱
いつもなら、喜六郎がお美杷の守りをしていることが多いのだけれど、この日に限り、喜六郎は春先の風邪で二階の自室で寝ていた。
一日くらいなら、お彩一人でも何とか店の方は切り盛りできる。たかが風邪だと軽く見ていては生命取りになるからと、お彩は、起き出そうとする喜六郎を半ば強制的に寝かせたのである。何を隠そう、お彩の母お絹、それに祖父参次の二人ともが質の悪い流行風邪で亡くなっているからだ。
お美杷は、喜六郎の隣の部屋に一人で寝かせていたはずであった。仕込みのため板場に入る前、乳をたっぷりと飲ませていて、よく眠っていたので、お彩は安心して階下(した)に降りてきたのだった。
一日くらいなら、お彩一人でも何とか店の方は切り盛りできる。たかが風邪だと軽く見ていては生命取りになるからと、お彩は、起き出そうとする喜六郎を半ば強制的に寝かせたのである。何を隠そう、お彩の母お絹、それに祖父参次の二人ともが質の悪い流行風邪で亡くなっているからだ。
お美杷は、喜六郎の隣の部屋に一人で寝かせていたはずであった。仕込みのため板場に入る前、乳をたっぷりと飲ませていて、よく眠っていたので、お彩は安心して階下(した)に降りてきたのだった。