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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第32章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の壱
 お彩は色を失って、慌てて二階へと駆け上がった。勢いよく部屋の障子を開けると、果たして、お美杷の眠っていたはずの小さな布団はもぬけの空であった。
 そっと夜具に触れてみると、まだ微かに温もりが残っている。お美杷が何者かに連れ去られて、まだ、たいした刻は経っておらぬに相違ない。
 悪い夢を見ているようである。茫然として階段を降りるその足どりは重かった。
「済まねえ、よっぽどのことがなけりゃあ、俺が気づくはずだったんだが、生憎と薬を飲んで寝入ってたみたいで、気づいてやれなかった」
 喜六郎が悔しげに声を震わせた。
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