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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第32章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の壱
大店のお嬢様なら身代金目当てに狙われるということもあろうが、と考えた時、ふと前夫京屋市兵衛のことを思い出したのだ。お美杷は伊勢次の実の子ではない。他ならぬ京屋市兵衛の子であり、京屋は江戸でも一、二と謳われる老舗にして大店だ。
が、次の瞬間には、慌てて、そんな考えを頭内から追い払った。
―馬鹿な。
いくらお美杷が何者かに連れ去られたからといって、市兵衛とそれを結びつけるなんて、どうかしている。この世でお美杷の出生の秘密を知る者は、自分しかいない。お美杷の父親である市兵衛すら知らないことなのだ。
が、次の瞬間には、慌てて、そんな考えを頭内から追い払った。
―馬鹿な。
いくらお美杷が何者かに連れ去られたからといって、市兵衛とそれを結びつけるなんて、どうかしている。この世でお美杷の出生の秘密を知る者は、自分しかいない。お美杷の父親である市兵衛すら知らないことなのだ。