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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第32章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の壱
何かといえば、すぐに市兵衛を思い出すのは、やはりまだ、想いが残っているからなのか。そう思えば、己れの未練と思い切りの悪さが歯がゆい。元々は、その未練心が伊勢次を死なせたのだ。それでもなお、我が身は、あの冷酷な男を忘れられないのかと、お彩は自分自身を情けなく思った。
喜六郎は、すぐに近くの番屋にお美杷失踪の旨を届けた。岡っ引きとその配下がその界隈を当たってはみたものの、その夜更けになっても手掛かりは何も掴めない有様だった。
春の陽が落ち、江戸の町に夜の帳が降りる頃、お彩の住む長屋の男たちがそれぞれ小さな隊を組み、お美杷の捜索のため江戸の町に散っていった。
喜六郎は、すぐに近くの番屋にお美杷失踪の旨を届けた。岡っ引きとその配下がその界隈を当たってはみたものの、その夜更けになっても手掛かりは何も掴めない有様だった。
春の陽が落ち、江戸の町に夜の帳が降りる頃、お彩の住む長屋の男たちがそれぞれ小さな隊を組み、お美杷の捜索のため江戸の町に散っていった。