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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第32章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の壱
殊に、斜向かいに住む大工留吉の女房おさきは、お美杷の身を我が事のように案じた。長屋の男連中はそれこそ血眼になってお美杷を方々探し回ったが、その行方は杳として知れなかった。
生まれてたったの六か月の赤子が忽然と一体、どこに消えたのかー。やはり、考えられるのは誘拐か、かどわかしの可能性が強いと、ひととおりの事情を訊きにきた岡っ引きもそう言った。
お彩も喜六郎も悶々として眠れぬ一夜を過ごした。長屋の男たちは、東の空の端が白み始めるまで心当たりを探してくれたのだが、結局、何の成果も得られずじまいであった。
それでも、そのときのお彩には、隣人たちの温かな心遣いや優しさがありがたかった。
生まれてたったの六か月の赤子が忽然と一体、どこに消えたのかー。やはり、考えられるのは誘拐か、かどわかしの可能性が強いと、ひととおりの事情を訊きにきた岡っ引きもそう言った。
お彩も喜六郎も悶々として眠れぬ一夜を過ごした。長屋の男たちは、東の空の端が白み始めるまで心当たりを探してくれたのだが、結局、何の成果も得られずじまいであった。
それでも、そのときのお彩には、隣人たちの温かな心遣いや優しさがありがたかった。