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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第32章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の壱
後日、男は別の少女を連れ去ろうとしたところを張っていた岡っ引きにその場でお縄にされたそうだ。数日経っていても、男の腕には小巻に噛みつかれた跡が残っていた。
「よほど強く思いきり噛んだんだろうって、後々までの語り草になったものさ」
勝気な小巻らしい逸話に、お彩は笑った。
「小巻さんらしいですね」
喜六郎がしみじみと言った。
「ま、あのときばかりは、あいつの負けず嫌いのはねっ返りなところもたまには良いもんだと思ったがな。だが、無事にあいつが帰ってきた後でも、もし、あのまま小巻が女衒に連れていかれちまってたらと想像しただけで、体が震えちまったもんさ」
「よほど強く思いきり噛んだんだろうって、後々までの語り草になったものさ」
勝気な小巻らしい逸話に、お彩は笑った。
「小巻さんらしいですね」
喜六郎がしみじみと言った。
「ま、あのときばかりは、あいつの負けず嫌いのはねっ返りなところもたまには良いもんだと思ったがな。だが、無事にあいつが帰ってきた後でも、もし、あのまま小巻が女衒に連れていかれちまってたらと想像しただけで、体が震えちまったもんさ」