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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第33章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の弐
松平越中守の屋敷から向こうは武家の屋敷ばかりが立ち並ぶ閑静なお屋敷町がひろがる。
母お絹がよく店を出していた場所ということもあり、お彩はよくこの川原に来た。何か心に悩みを抱えているときには、橋のたもとでぼんやりと川の流れを眺める。そうとすると、不思議なことに、淀みない流れに心に降り積もるちり芥(あくた)が洗われてゆくようであった。
そして、ここは、かつての良人市兵衛との想い出の場所でもある。お彩が悩み事を抱えてここに立つ時、市兵衛は風のようにどこからともなく姿を現し、お彩の言葉に耳を傾けてくれた。本当に不思議な縁(えにし)であった。たとえ最初は市兵衛が意図してお彩の前に現れたのだとしても、互いにひとめで惹かれ合い、恋に落ちた。
母お絹がよく店を出していた場所ということもあり、お彩はよくこの川原に来た。何か心に悩みを抱えているときには、橋のたもとでぼんやりと川の流れを眺める。そうとすると、不思議なことに、淀みない流れに心に降り積もるちり芥(あくた)が洗われてゆくようであった。
そして、ここは、かつての良人市兵衛との想い出の場所でもある。お彩が悩み事を抱えてここに立つ時、市兵衛は風のようにどこからともなく姿を現し、お彩の言葉に耳を傾けてくれた。本当に不思議な縁(えにし)であった。たとえ最初は市兵衛が意図してお彩の前に現れたのだとしても、互いにひとめで惹かれ合い、恋に落ちた。