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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第33章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の弐
そして、市兵衛の孤独の因の一つである秘密―市兵衛の前の女房と手代の道ならぬ恋の話を知り、お彩は大きな衝撃を受けた。しかし、市兵衛の抱える壮絶なまでの孤独は、それだけからくるものではなかった。市兵衛という男は、理由なき闇をその心に持っている。その闇は、たとえ何をもってしても埋めることができないものであった。
その事実を知った時、お彩は最早、市兵衛にとっての自分の存在価値を見い出すことができなくなった。それが、お彩が京屋を出た真実の理由であった。
今日、ここに来たのは、何も単身で松平様のお屋敷に乗り込もうなどと大それたことを考えついたわけではない。いくらお彩が向こう見ずだとはいえ、それほど愚かではない。
その事実を知った時、お彩は最早、市兵衛にとっての自分の存在価値を見い出すことができなくなった。それが、お彩が京屋を出た真実の理由であった。
今日、ここに来たのは、何も単身で松平様のお屋敷に乗り込もうなどと大それたことを考えついたわけではない。いくらお彩が向こう見ずだとはいえ、それほど愚かではない。