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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第33章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の弐
 花はまだ八分以上咲いていたけれど、そろそろ散り始めた花びらが地面に散り敷いている。桃色の花片がびっしりと積もった地面を見つめていると、視界までもがそのはんなりとした華やかな色に染まりそうに思える。
 もう樹齢も定かではないその老いた大樹の周囲だけは、薄桃色の霞が立ち込めていて、あたかも大気までもがその色に染まっているようだ。
 そろそろ夕闇が樹下に這い寄ろうとする時刻になっていた。喜六郎はもう帰っているだろうか。お彩は暗澹とした気持で水面を見た。先刻まで夕陽を映していた川面も今は暗く染まり始めている。まさに、お彩の今の心を映し出しているかのような陰鬱な色であった。
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