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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第33章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の弐
咲き誇る桜花の下で、二人は見つめ合う。
市兵衛がお彩を見ていた。
お彩も市兵衛を見つめる。
静かな、けれども密度の濃い時間が愕くほどの速さで二人の傍を流れていった。
市兵衛の貌を見るのは実に一年ぶりのことであった。二度と逢わないと固く心に決めた男、それでも、忘れ得ぬ恋しい男であった。
お彩は不覚にも涙を零しそうになり、慌てて市兵衛の前から逃れるように身を翻そうとした。その間際、市兵衛が永遠の静寂を破った。
「逢いたかった」
まるでその声に魔力で秘められているかのように、お彩の脚はその場に縫い止められた。市兵衛の手がお彩の肩をやわらかく掴んだ。
市兵衛がお彩を見ていた。
お彩も市兵衛を見つめる。
静かな、けれども密度の濃い時間が愕くほどの速さで二人の傍を流れていった。
市兵衛の貌を見るのは実に一年ぶりのことであった。二度と逢わないと固く心に決めた男、それでも、忘れ得ぬ恋しい男であった。
お彩は不覚にも涙を零しそうになり、慌てて市兵衛の前から逃れるように身を翻そうとした。その間際、市兵衛が永遠の静寂を破った。
「逢いたかった」
まるでその声に魔力で秘められているかのように、お彩の脚はその場に縫い止められた。市兵衛の手がお彩の肩をやわらかく掴んだ。