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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第33章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の弐
 河津屋の唯一の泣き所は、京屋ほどの老舗ではなく、まだ仁左衛門で漸く二代目という新しい店であるという点だった。仁左衛門の父精左衛門は元はといえば、日本橋でやはり名の知られた大店「平田屋」から暖簾分けして商いを始めた。精左衛門は平田屋に長年勤めあげた大番頭であったのだ。
 その点、京屋は現代の市兵衛が七代目になるという老舗である。京屋は三代めの主から松平越中守様のお屋敷に出入りを許されていた。いわゆる御用商人である。
 こういった御用商人にはお出入りを許可されたという証でもある鑑札が渡される。
 河津屋仁左衛門はあろうことか、この鑑札を欲しがっていた。
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