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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第35章 第十四話 【雪待ち月の祈り】
 お彩はしゃがみ込んで、一枚の葉を拾い上げた。茶色に変色した枯れ葉ではなく、鮮やかに染め上がった紅葉であった。随明寺は桜花だけではなく紅葉の名所としても知られるから、大方はその辺りから飛んできたものかもしれない。
 お彩は拾い上げた紅葉の葉にじっと見入った。その時、ふいに頭上から声が降ってきた。「ここに【花がすみ】の喜六郎さんは、おいでですか」
 お彩は顔を上げた。
 長身の男が眼前に佇んでいる。苦み走ったなかなかの男っぷりで、屈強で逞しい印象だった。年の頃は四十そこそこであろうか。
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