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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第35章 第十四話 【雪待ち月の祈り】
「まぁ、ここで立ち話ってえいうのも何だ。座って、じっくりと話そうじゃねえか」
 その言葉のままに、安五郎は手近な椅子を引き寄せて座った。ちらりとお彩の方を見るのに、お彩は喜六郎に言う。
「旦那さん、私は少し出かけてきます」
 格別に用事などないのだが、安五郎がお彩がいては話がしにくそうなのを見て気を遣ったのだ。
「そうか、しかし、今日は寒いぜ。安っつぁん、この娘(こ)はお彩ちゃんといって、この店の看板娘なんだ。もうこの店に勤めて五年にもなる長い付き合いだから、気心も知れてる。何も遠慮なんかすることはねえ。口の堅いのも保証するぜ」
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