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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第36章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の弐
「お彩ちゃんは所帯を持って半年も経たねえ間に、亭主のもとより飛び出してきちまった。マ、辛抱強いあの娘がそんな大それたことを深く考えもしねえでやらかすとは思えねえ。京屋の当代の主市兵衛さんはやり手の商人として名が通っているが、先代の息子ではなく、家付き娘の婿におさまったお人なんだ。男っぷりも良くて商いの才覚もあるってことで先代の旦那に見込まれてな。お彩ちゃんはその娘が亡くなった後釜に座ったんだ」
「つまり後添えということですね」
 安五郎の面には複雑そうな表情がある。
 喜六郎は、相手の顔色をじいっと見つめながら頷いた。
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