この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第37章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の参
お彩はまだ京屋の人別帳に入ったままだ。要するに、戸籍上・法律上は京屋市兵衛の妻のままなのだ。かつて伊勢次とも夫婦同然の暮らしをしていたけれど、結局は正式な夫婦ではなかった。そんな状態で、また、別の男と所帯を持つのは許されないことであった。
喜六郎はお彩を労りのこもったまなざしで見た。
「それも安っさんは全部承知の上さ。勝手に喋って申し訳ねえが、大方の話は今日、安っさんに俺から話しておいた。安っさんは、たとえ祝言を挙げても、それはそれで構わねえ、書面のことは、あっちから去り状を貰ってからで良いと言ってる。人別帳に入れることはできねえけれども、そんなことは気にしねえから、その点は心配要らないとな」
「―」
お彩は手をついた。
喜六郎はお彩を労りのこもったまなざしで見た。
「それも安っさんは全部承知の上さ。勝手に喋って申し訳ねえが、大方の話は今日、安っさんに俺から話しておいた。安っさんは、たとえ祝言を挙げても、それはそれで構わねえ、書面のことは、あっちから去り状を貰ってからで良いと言ってる。人別帳に入れることはできねえけれども、そんなことは気にしねえから、その点は心配要らないとな」
「―」
お彩は手をついた。