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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第37章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の参
「本当にありがとうごさいます。私のために、そこまで考えて下さって。何てお礼を言ったら良いのか」
 お彩は涙が溢れて、言葉にならない。
 喜六郎の心が嬉しかった。
「ただ、このことは、もう少し考えさせて頂きたいんです。確かに、他のお人と祝言を挙げるというのは一つの方法かもしれませんが、そんなことにまで何の拘わりもない安五郎さんを巻き込んでは申し訳ないと思うんです。ですから、もう少しだけ、時間を頂けませんか」
 かつて伊勢次を不幸にしてしまったように、安五郎をもまた不幸にすることはできない。お彩の奥底にはいまだに市兵衛への消えることのない愛がある。そんな状態でまた他の男と所帯を持てば、どうなるか―。お彩は、もう二度と同じ悲劇を起こしたくはなかった。
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