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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第37章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の参
「酷えことを言うようだが、あの旦那に立ち向かうには、これくらいのことをしなけりゃあ、到底勝ち目はねえ。安っさんと急いで祝言を挙げて、これでもまだ京屋に戻れと言われますかと捨て身でぶつかる―、それが良いと俺は考えたんだ」
 お彩は喜六郎の言葉に聞き入るしかなかった。
 その夜、店を出てから長屋までの帰り道、お彩は暗澹たる気持ちだった。
 一体、自分はどうするべきなのだろうか。
 まるで悪夢を見ているような心持ちだ。
 まさか市兵衛がここまで強引なやり方でくるとは考えていなかったわけだが、それは所詮、お彩が「氷の京屋」を甘く見ていたということだろう。
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