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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第37章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の参
 元々、自分以外の他者の孤独や哀しみを癒せるはずはないのだ。たとえ夫婦、親子、兄弟姉妹であろうと、その人の苦しみはその人だけのものであり、誰も代わって背負うことなどできはしない。市兵衛の心に巣喰う闇を何とかできるなぞと考えたのは所詮はお彩の思い上がり、不遜さだったのだろう。
 それならば、安五郎の言うように、他ならぬ市兵衛自身が望むのならば、お彩は市兵衛の許に戻るべきなのかもしれない。
 そこまで考えた時、お彩の眼裏に伊勢次の屈託ない笑顔が蘇った。
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