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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第1章 第一話―其の壱―
 また母の言葉がお彩の耳奧で蘇った。
 お絹はこの台詞をその父参次―つまり、お彩にとっては祖父からしばしば聞かされたという。
 花の開くような母の笑顔が鮮明に瞼に浮かぶ。優しかった母。働き者だった母。お彩は心の中で呟いた。
―おっかさん、どうして死んじゃったの? 私を置いて、一人でいなくなったりしちまったのよ?
 母さえ生きていれば。自分が家を出ることも、いや、自分自身の心の奥底深くに眠る想いに気付くこともなかったはずだ。邪な、他人に話すことすら忌まわしい邪悪なこの胸の想いを抱えて、お彩は悶々と暮らしている。
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