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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第1章 第一話―其の壱―
 お彩が己れの心に巣くうその気持ちを初めて自覚したのは、いつだったろうか。そう、確か、お絹の野辺送りを済ませてから数日経った日のことだった。父と二人きりで夕飯を食べている最中であった。小さなちゃぶ台を挟んで向かい合っていた二人が同時に漬け物に手を伸ばし、その手と手が束の間、触れ合った。たったそれだけのことで、何故かお彩はひどく狼狽えた。
 カッと身体中が熱くなって、まともに父の顔を見ていることができなくなった。もちろん、肝心の父の方はお彩の心中にはとんと気付いていない。それだけがまだしも救いではあった。もし父にこの気持ちを知られたなら、お彩は一刻たりとも生きてはいられないだろう。幼いときから大好きだった父にこんな想いを知られると想像しただけで、恥ずかしさで死んでしまいそうになる。
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