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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第38章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の四
お彩は川べりに佇んで、冷たい秋の夕風に吹かれていた。あまりに哀しい時、人は涙さえ出ないものなのかもしれない。まるで心が麻痺してしまったかのようで、涙ひと粒湧いてこなかった。
ふと顔を仰向けると、菫色の空に新月が頼りなげに浮かんでいた。細い月明かりが桜の樹をうすぼんやりと浮かび上がらせている。
お彩は惚けたような虚ろな表情(かお)で、いつまでもその場に立ち尽くしていた。