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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第39章 第十五話 【静かなる月】 其の壱
 お美杷と離れてからというもの、何をしていても、ふっとあの子のことを思い出してしまう。降る雪を見ても、こうして風に運ばれてゆく花びらを見ても、眼に映る現実の景色の向こうに愛しい我が子の面影を見てしまうのは常のことだ。
 冬の夜風が烈しく吹きつけ、戸を揺らす晩には、子どもが怯えて泣いているのではないかと心配で眠れず、吹きすさぶ風の音の中にかすかに幼子の泣き声が聞こえるような気がしてならない。
 月日は無情だ。よく哀しい出来事は、刻(とき)が経てば忘れられるというけれど、刻はまた、愉しかった想い出をも風化させ、愛しい者との距離の隔てを大きくする。お美杷が京屋へ連れ去られた日を境に、お彩の記憶の中のお美杷は刻を止めたままだ。
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