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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第39章 第十五話 【静かなる月】 其の壱
乳を飲む赤子がいなくなり、それでも出る乳を少し搾っては捨て、また、少し搾っては捨ててを繰り返していたときも哀しくやるせなかったけれど、十日余りして、とうとう出なくなってしまったときは、正直もっと辛かった。
お美杷がいなくなって既に四カ月を経た今は、乳房が腫れる痛みに悩まされることもなくなったが、そのことにもまた、一抹の淋しさを感じずにはいられないお彩であった。要するに、今のお彩にとっては眼にするもの、耳にするもののすべてが手放した我が子を思い出すきっかけになるのだった。
その時、階下から呼び声がして、お彩は突如として現実に引き戻された。お彩は今、「花がすみ」の二階の一室の窓際に座り、ぼんやりと外の景色を眺めていたところだ。
お美杷がいなくなって既に四カ月を経た今は、乳房が腫れる痛みに悩まされることもなくなったが、そのことにもまた、一抹の淋しさを感じずにはいられないお彩であった。要するに、今のお彩にとっては眼にするもの、耳にするもののすべてが手放した我が子を思い出すきっかけになるのだった。
その時、階下から呼び声がして、お彩は突如として現実に引き戻された。お彩は今、「花がすみ」の二階の一室の窓際に座り、ぼんやりと外の景色を眺めていたところだ。