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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第39章 第十五話 【静かなる月】 其の壱
上野の寛永寺などと共に江戸の花見の名所として名所図絵にも載っているほどの随明寺の桜だけれど、卯月もはや十日ともなれば、境内の桜はあらかた散り、ちらほらと咲き残った桜花の間から、みずみずしい新緑が見え始めている。
桜はむろん、花が盛りの時季も良いものだが、こうして萌えいづるような浅い緑の葉の時季も趣があって良いものだ。開祖の浄徳大和尚を祀る奥ノ院の傍らに「大池」と呼ばれる巨きな池があり、そのほとりに並んで立つ桜の大樹が一斉に咲き誇った様は、それはもう見事としか言いようがない。遠方から眺めても、薄桃色の霧がその辺りに立ちこめたように見えるほど、たっぷりとした花をつける。
桜はむろん、花が盛りの時季も良いものだが、こうして萌えいづるような浅い緑の葉の時季も趣があって良いものだ。開祖の浄徳大和尚を祀る奥ノ院の傍らに「大池」と呼ばれる巨きな池があり、そのほとりに並んで立つ桜の大樹が一斉に咲き誇った様は、それはもう見事としか言いようがない。遠方から眺めても、薄桃色の霧がその辺りに立ちこめたように見えるほど、たっぷりとした花をつける。