パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第39章 第十五話　【静かなる月】　其の壱

「そう言やァ、おとみさんのところは、つい十日ほど前に曾孫が生まれたそうだぜ。確かもう五人目だとか言ってな」
　日本橋の方で小さい紙屋を営む倅夫婦は三人の子に恵まれ、皆とうにそれぞれ片づいている。
「おとみさんに名付け親になってくれって孫が頼みにきたものだから、女の子だし、おふでってつけたって言ってたけど、筆屋の孫におふでたア、ちっと出来過ぎじゃねえかって言ってやったら、婆さん、笑ってやがった」
　わざと明るい声音で面白おかしく話して聞かせてくれている、喜六郎のその気遣いは嬉しい。